DCC自動往復運転レイアウト 沙流内 ( さるない ) 鉄道 1/87・12mm、9mm
2021 年の池袋鉄道模型芸術祭に出展予定だったモジュールのあらましをまとめたものです。
間接的にはなりますが、祭を少しでも応援したいと思っております。
沙流内鉄道は、北海道日高山脈の東部の沙流川の支流から南下して日高海岸部へ下る総
延長 40km ほどの鉱山鉄道です。主たる輸送物は石炭と木材。客扱いは少なかったよう
です。沿線に 762mm の森林鉄道と鉱山軌道が支線としていくつか延びています。昭和
30 年代初頭まで、蒸気機関車を中心に運行していましたが、人知れず廃線となっていま
す。モジュールで製作した「山ノ神土(やまのかんど)」駅は、昔近くで石炭が採掘されは
じめたとき、それを和人が「山の神の土」と呼んだということから駅名となったそうです。
モジュール全景
もともとは、DCC を使った自動往復交換運転の実験用の運転盤として 2017 年頃に製
作をスタートしました。最初はポイント2つの列車交換のみの線路配置でした。また、当
初は B 型や C 型といった小型蒸気機関車中心で、ベニヤ平原で自動運転を実験していま
した。その後、手持ちの 9200 型、4100 型蒸気機関車やナロー機関車も走らせたく
なったり、またホッパーをつくりたくなり、カーブ緩急化、ポイント追加やナロー線の増
設工事をおこなっていきました。最初からプランを決めてつくったのではなく、やりたい
ことを追加したり撤去しながら、現状の姿となっています。昨年 6.5mm ゲージの機関
車キットを購入したので、またナロー線が増えるかもしれません。
さいはての炭鉱鉄道の小さな駐泊所で、まわりには住居もほとんどない空疎な風景を目
指しました。スケールは 1/87 でメインラインは 12mm、ナローは 9mm です。
そのため、建物・地面ともグレー系を基調とした色としています。また、ドラム缶など
のアクセサリも同系色としています。アクセントとして、機関庫のレンガや給水塔タンク
は赤系を配しました。季節は、初夏で明るい緑からやや濃い緑に変わっていく頃を想定し
ています。
線路は、すべてハンドレイで製作しています。これも実験として複数の手法を試しまし
た。真鍮の小釘や木ネジを線路幅に打って、それにレールをハンダ付けしていく方法。い
わゆる PCB 枕木をプリント基板から切り出して敷設する方法。真鍮線を仮枕木として事
前に線路を組んで、接着剤で固着後、真鍮線を取り外す方法。直線や曲線はどれも一長一
短がありますが、ポイント部は PCB 枕木方式が精度が出しやすく、また工作が容易でし
た。ハンドレイ自体もそんなに難しい作業ではなく、木の枕木らしい質感を得ることがで
きました。
メインラインは 12mm で、マイクロエンジニアリングの#55 のウェザードレールに
高さ 1.5mm のバスウッドの枕木を使っています。ナローラインの 9mm は、メインと
の線路の差を出したいため、同じく#40 のウェザードレールと高さ 1.0 mmバスウッド
材を切り出して枕木として使いました。台枠の基板に直接枕木を貼り、レールを敷設して
います。
むき出しの地面は 100 均で売っている紙粘土で起伏をつくり、その上からタミヤの情
景テクスチャーペイントのサンド、その後、アクリル絵の具やパステルなどで着色してい
きます。地面づくりでは、このテクスチャーペイントが重宝しました。
草地は、NOCH の静電気を利用した草撒き器を使って 2mm、4mm 長のワイルドグ
ラス(草状繊維)を複数色をブレンドして撒いてベースとしています。また、ナロー線の
脇には、「沙流」というアイヌ語の語源となる葦(よし、あし)をイメージして、丈の長い
フィールドグラスを手で植えました。まだ改善の余地がありますが、きつねが気に入って
住みかにしているようです。
背景画は、私の娘に CG で描いてもらいました。北海道的な山々とオーダしたのですが
どうも北アルプスをイメージしたようです。
駅舎(Ms+社)、機関庫(ファーラー社)、ホッパー(Builder In Scale 社)は、
市販キットに手を入れて組み立てています。給炭台と給水塔はスクラッチです。北海道風
の給水塔は、TMS で作品を発表された平田克良氏の作品をアレンジし小型化したものを
ペーパーとバスウッドで製作しています。外梯子は Φ0.5mm 線の支柱に穴をあけて
Φ0.3mm 線の踏み板を通して作ったり、と目立たないところの工作を楽しんだ建物です。
これらの演出効果は大きいので、時間をかけていろいろ実験したいのですが、今回は駅
の空疎感をだすため、行商のおばさん(猫屋線シリーズ)と入換係のおじさん(KATO)
のふたりのみです。
車輌やポイントは、すべて DCC で制御をおこなっています。このモジュール製作の
きっかけとなった自動運転を使うことで、同時に 5 列車を制御しています。
DCC は、車輌の走行・ライティング・サウンド・ギミック(スモークやアンカプラな
ど)と、パソコンからの自動制御をひとつのシステムで実現できます。現在、これが最良
の商用化された統合制御システムはないかと思っています(もちろん完全ではありません
が)。また、PWM 方式でモータを制御しているので、実感的なスロー運転ができるとい
う副産物もついています。
自動運転システムとしては、DesktopStation 製の DSmain という DCC コントロー
ラを使っています。パソコンとの USB 接続インターフェースやプログラミングソフトが
ついているので、比較簡単に自動運転のプログラムができました。自動運転では、車輌の
位置検出が重要ですが、これは線路に片ギャップを切って、その区間に車輌(DCC デ
コーダ)が存在することを検出しています。これには Nucky 製の s88-N Train Detec
tor を使っています。また、ポイント切替もサーボモータを DCC デコーダ(DesktopSt
ation)で制御しています。スローアクションで実感的な切り替えが簡単に実現できます。
また、サーボモータ制御で 100 均磁石の Kadee アンカプラも設置しました。このような
サードパーティメーカによる開発製品が存在したことが、わたしにとって DCC 自動運転
の導入を容易にしてくれました。
VIDEO
これらの製品がなければ、たぶん私は自動運転を始めていなかったでしょう。
★Desktop Station
・DSmainR5.1(自動運転のメインで使っています)<販売終了>
https://desktopstation.net/wiki/doku.php/dsmain_r5.1
・DSair2(スマホやiPadなどのワイヤレス環境で使っています)
https://desktopstation.net/wiki/doku.php/dsair2
・DSservo(ポイント切り替え、アンカプラ制御)
https://desktopstation.net/wiki/doku.php/dsservo
★Nucky
・s88-N Train Detector (16区間用) (2台使用しています)
http://web.nucky.jp/dcc/s88n_train_detector/s88n_train_detector.html
★DCC Sound Decoder
・SoundTraxx:Econami(北丹2)
Tsunami2(芦別9237、東野DC20、ガソリンカー)
・ESU:LokSound5+オープンサウンドデータ(美唄4122)
https://desktopstation.net/sounds/
短い End to End の線路配置のモジュールでも、自動運転制御を取り入れることで、
ロッドの動きなどをゆったりと眺めながら、コーヒーやお酒の飲みながらゆったりと楽し
むことができます。また、たとえばナロー線は自動運転にして、メインラインはマニュア
ルで入れ替え運転をするというハイブリッド運転も可能です。さらに、シーナリーやスト
ラクチュアを設置すれば、限られたスペースの中でも、実感的に車輌が走りまわる鉄道風
景を楽しむことができます。ぜひ、みなさんも遊んでみてください。
2021.03.19初版
2021.03.20動画追加
2021.03.21YouTube動画追加