組線路でマルチゲージ 1/87･16.5mm、12mm、10.5mm、9mm、6.5mm

　この展示ではＨＯスケール1/87で簡単に楽しめる市販線路で、来場者にＤＣＣ（Digital Command Control）特にサウンドなどを自分で操作体験して、運転の楽しさを味わってもらうことを主題としています。

　ＨＯスケール1/87で鉄道模型を愉しむ方法として、縮尺を統一した上でいろいろなゲージの線路を敷いて運転するやり方があります。

　線路における左右のレールの間隔を軌間（キカン）と呼び、ゲージ（gauge）ともいいます。実物鉄道線路のゲージは多岐に渡っていますが、世界で採用例が多いゲージとして1435mmゲージがあり、これを標準軌（ひょうじゅんき、Standard gauge）と呼んでいます。日本では新幹線や主に関西の私鉄、路面電車、地下鉄路線で標準軌が採用されています。標準軌より狭いゲージの線路を狭軌（きょうき、Narrow gauge）と呼び、狭軌の中でもいくつかのグループがあり、1372mm、1067mm、1000mm、914mm、762mm、610mmなどがよく採用されます。日本ではＪＲ在来線、多くの私鉄やこれらに乗り入れる地下鉄、路面電車、軽便鉄道、産業用鉄道などで採用されています。標準軌より広いゲージの線路を広軌（こうき、Broad gauge）と呼び、海外での採用例がありますが、日本の鉄道では工場構内鉄道等で用いられている例がある程度です。

　このような多数のゲージを模型で愉しむには、線路の市販製品があると手軽に採用することができます。枕木やレールを手作業で敷く方法やフレキシブルトラックを敷いて線路を作るのも一つの方法ですが、プラ製道床にレールを組み込んだ道床付組線路を利用すると、より簡便に運転をすることができます。
　このレイアウトでは、市販品として入手可能な組線路の製品で、ＨＯスケールとして利用可能なものを採用して小判形エンドレスを敷いています。組線路製品には以下のような例があります。

◆実物1435mm標準軌の1/87　新幹線・京急・京阪など
FLEISCHMANN （フライシュマン）	HO Standard track	16.5mmゲージ	#100レール
KATO（カトー）	HO UNITRACK（ユニトラック）	16.5mmゲージ	#83レール
◆実物1067mm狭軌の1/87　国鉄・ＪＲなど、日本で最初に採用されたゲージ
Models IMON （イモン）	HO1067システムトラック	12mmゲージ	#70レール
TILLIG （ティリヒ）	H0m Bettungsgleissystem	12mmゲージ	#70レール
◆実物914mm狭軌の1/87　西大寺鉄道（1962年廃止）など
Blackstone Models	ProTraxxTM HOn3 Snap-Track System	10.5mmゲージ	#70レール
◆実物762mm狭軌の1/87　三岐鉄道北勢線、四日市あすなろう鉄道など
KATO（カトー）	Ｎ UNITRACK （ユニトラック）	9mmゲージ	#78レール
◆実物610mm狭軌の1/87　立山砂防工事専用軌道など
ROKUHAN(ロクハン)	ロクハンレール	6.5mmゲージ	#60レール

　このレイアウトでは、「市販組線路を利用して、1/87で多数のゲージで運転する」ことをコンセプトとしています。1/87用道床付組線路が各種市販されていれば良いのですが、狭軌線路の模型はあまり多く製品化されていません。そこで道床や枕木寸法などが異なるのは仕方ないこととして、ゲージが利用できる製品を使っています。また組立と接続の保持をジョイナーのみで行っていますので、機能に優れたユニジョイナー使用の線路を優先しています。なお、市販品ではありますが、外国製品もありますので、どこの模型店でも入手できる、というわけにはいかないものが多いです。
　　　　　　　　　

メーカー	取り扱い	作者が入手した店
FLEISCHMANN	欧州形鉄道模型を扱っている模型店	モデルバーン
KATO UNITRACK	比較的入手しやすいが、ＨＯ用は置いてない店もある	上新キッズランド
Models IMON	HO1067線路取り扱い店は少ない	上新キッズランド
TILLIG	欧州形鉄道模型を扱っている模型店	トラムウェイ、チムニー
Blackstone Models	メーカー在庫なし追加生産見通し不明	六甲模型
ROKUHAN	ロクハンＺゲージ取り扱い店	上新キッズランド

　KATO、Blackstone、TILLIG は、KATOユニジョイナーでの接続となっていますが、電気的な性能に問題もあるので、一部は金属ジョイナー部を別製品に取り替えているところがあります。

　市販道床付組線路には各種の曲線半径が設定されているものがあり、運転する車両編成や設置場所により選択することができます。このレイアウトの始まりはベニヤ合板定尺の910mm×1820mmで、いろいろなゲージの運転をすることを考えています。そのため急曲線の小判形エンドレスレイアウトになっていますが、車輛側の曲線通過性能試験も行えることになっています。曲線半径は以下のようになっています。

最外	10.5mmゲージ	R480
	16.5mmゲージ	R430
	12 mmゲージ	R353　R310　複線
	9 mmゲージ	R216
最内	6.5mmゲージ	R170
Blackstone Modelsの10.5mmゲージHOn3用組線路は曲線がR480の１種類しかないので、これを敷くには定尺スペースに入れることができません。市販品利用が方針なので仕方がありませんが、このR480を最も外側の曲線としています。

　6.5mmゲージ以外の制御はＤＣＣ（Digital Command Control）を使います。コマンドステーションはKATOのD101（Digitrax DCS50K）を主体に無線アダプタUR92を介して無線コントローラDT402DJも接続しています。16.5mmゲージの新幹線０系の運転は、ＤＣＣ電子工作連合の「ミント缶DCCコントローラ」を使っています。 ポイントは12mmゲージに４ヶ所、9mmゲージの２ヶ所ありますが、DigitraxのDS51K1デコーダを組み込んであり、ＤＣＣによりポイント転換を行います。
　ＤＣＣ体験運転は「ミント缶DCCコントローラ」を使ってもらいます。小型で操作ボタン類が少なく、子どもたちでも操作が可能な機器です。また、スマートフォンやタブレットPCをコントローラとして使用できるDSair2も導入しています。走行車両や担当者の状況に応じて各種取り替えて使用しています。
　来場者に運転体験をしてもらうと、速度をいっぱいまで出してしまう人もいる可能性があるので、あらかじめ車両側のデコーダＣＶ値など設定調整を行い、急曲線の走行でも支障がないようにしておきます。2019年JAMコンベンションまでのところで、来場者体験運転での脱線などの事例はありません。

◆おもなＤＣＣ機材
　　★Digitrax
　　　・D101（DCS50K）　トランス電源添付品でしたが、DC19V 3.75A ノートPC用電源に取替えて使用
　　　　　http://www.katomodels.com/hobby/dcc/start.shtml
　　　・DT402DJ　UR92J　　無線コントローラとして使用、２列車制御
　　　　　https://www.digitrax.com/products/retired/throttles/dt402d/
　　　　　https://www.digitrax.com/products/retired/universal-panel-ir-radio-receivers/ur92/
　　★TwayDCC
　　　・ミント缶DCCコントローラ　mint can size command station
　　　　　https://desktopstation.net/wiki/doku.php/mint_can_controller2
　　　　　http://twaydcc.cocolog-nifty.com/top/dcc.html
　　★Desktop Station
　　　・DSair2　無線環境DCC command station
　　　　　https://desktopstation.net/wiki/doku.php/dsair2